誰?

ここ数日涼しい日が続いて随分と楽でしたが、また蒸し暑い真夏日がやってきてしまいましたね。
そんな時はちょいとゾクっとしてみるのもよいかもしれません。

皆さんも小学校時代に林間学校なり臨海学校と言った移動教室の経験ありますよねぇ?
僕の住む江東区は日光に施設があり、小学6年生の時に日光移動教室という名のもと、区内の2校が合同でその施設に数日宿泊するわけです。


その施設で体験した不思議なお話しましょうか・・・・・


施設内ではクラス毎に男女分かれて部屋が割り振られるんですが、1部屋がけっこう広いんだ。小さめの長方形のホールをイメージしていただければ良いでしょうか。戸は引き戸になっていて、その上は細長く隙間が空いている作り。中に入ると向かって右の壁一面が等間隔に仕切られた棚になっている。おのおのその棚にリュックや荷物を入れるわけです。
実はこの棚、夜0時を過ぎると仏壇に見えるっていうのがうちの小学校に代々伝わるこの施設の怪談話。この話は有名なもんだから皆恐る恐る近寄るわけですよ。もちろん何か仕掛けがあるわけじゃない普通の仕切り棚。
まぁまだ明るいし、課外授業であちこち歩き回って来たばかりで疲れてもいますから仏壇云々の話はさておき、とりあえずおのおの好きな所に荷物をしまう。
夜は楽しみな食事やキャンプファイアが待ってるもんで棚の事は早々に忘れて館内イベントに繰り出すわけです。
食事前に大浴場にてガヤガヤと風呂に入り汗を流し、さっぱりした所で食堂に集まりワイワイと夕飯を食べる。風呂上りに皆で飯を食べるなんて光景も非日常なもんだから何とも楽しい。お待ちかねのキャンプファイアも盛り上る。何せ東京では見る事が出来ないくらいの満天の星の元、明かりはキャンプファイアの炎と施設の明かりだけで他は真っ暗というロケーション。フォークダンスで好きな娘と手を繋いだだの何だのと皆大興奮なわけです。盛り上るだけ盛り上がって半ば放心状態で部屋に戻るんですね。僕らの部屋を担当してくれた学校の先生がちょいと粋な人で、消灯タイムである21時ジャストに本来は眠くなくても静かに寝る体勢に入らないといけないのに、この先生21時ジャストを合図に枕投げ大会をやってくれましてね。もちろん先生公認なもんだから大盛り上がりですよ。 5分ほどの枕投げ大会が終わるとお待ちかねと言わんばかりに怖い話をしてくれました。まずは軽いジャブ程度の内容。そして『10時に見回りで来た時に次の怖い話するから騒がないで起きてろよ。段々怖くなるからな』と。もちろん疲れて眠ってしまう友達もいましたがほとんどは布団に潜りながら話をしつつまだかまだかと起きてました。1時間後…約束通り見回りに来た先生が次の怖い話。確かにさっきの話より怖い。けっこう本気でビビり始める友達も出てきました。そして話が終わると『また11時に来るからな。次は最後の話だから一番怖いぞ』と。

この時点ですでに22時を過ぎているわけですが、起きている連中は元気ですよ。ラストの話はどうなっちゃうのか怖いもの聞きたさで目は冴えちゃってる。
睡魔に脱落する奴もチラホラ出ながら23時になった。パタパタと廊下を歩く音が近づき、ス〜っと引き戸が開いて先生が入ってきた。みんなうつ伏せになりながら肘を立て最後の怖い話に聞き入る。 これが前2回の話とは比べ物にならないくらい怖い話だったもんで先生が『ちゃんと寝ろよ』と帰った後普通はまた騒ぐはずが、ほとんどの連中が布団を頭まで被ってそのまま眠ってしまう状態だったんですね。そんな時、思い出したのが例の棚です。0時まであと少し。ホントに仏壇に見えてきたらどうしようビビりつつ横になりながら棚を眺めていました。見ているうちに、ランダムに入れられた色とりどりの荷物類が暗闇の中で眠さも手伝って何となく仏壇のように見えてしまうって事なんじゃないかとチラッと思った。隣に横になっていた友達とそう小声で話していたんです。そうだ、きっとそういう事だと恐い気持ちを落ち着かせるように二人で納得させている時、僕の視線がふと引き戸の上の細長い隙間に。

ス〜・・・

布団からその隙間越しに廊下の天井が見えるんですが、その天井の蛍光灯の横をス〜っとゆっくり影が横切って行ったんです。

ん?何かおかしい

先生の見回りは終わってるし、何よりシーンと静まりかえっているから誰かが廊下を歩けばパタパタと音が聞こえるはずなのに全く聞こえない。隣の部屋の引き戸を開ける音すら聞こえない。影が通り過ぎた後一瞬にしてそう思った僕は恐る恐る引き戸を開けて廊下を見渡した。

誰もいない

僕らの寝ている部屋は比較的長い廊下のど真ん中。部屋のちょうど前が男女別のトイレ。でもドアを開けた音もしなかった。念のためと、申し訳ないが両トイレとも覗いてみた。

誰もいない

こんなに早く身を隠せる場所ないしなぁ…と思いつつ部屋に戻り布団に入ると隣で横になっていた友達が『誰か居た?』と声をかけてきたんです。どうやらその友達も見ていたんです・・・その“影”。間違いなくス〜っと影は通っていたんですね。
何かが通ったんだろうけど何か釈然としない。二人ともそのまま布団被って眠ってしまいましたよ。
で、後になって気付いたんですが・・・

天井の、しかも照明のすぐ横になんて影が映るはずないんです・・・・・

あれはいったい何だったんでしょうねぇ。